寄附金控除を利用した税金の減額の仕組みを解説します。
ふるさと納税は寄附金控除を利用して所得税と住民税を減額することにより、実質的に寄附先の自治体へ納税先の変更を実現させるような制度です。
ふるさと納税をお考えの方は寄附金控除の仕組みを理解することが大切です。
1. 寄附金を払うと税金はどうなる?
個人が寄附をするとその寄附金の金額に応じてある一定の金額の税金の減額効果があります。
税金の計算上は2つの恩恵があります。
所得税と住民税が減額できるという恩恵です。
2. 所得税にとっての寄附金
所得税における税金計算上の恩恵は所得控除としての『寄附金控除』です。
『所得控除』とは税率を掛け算する対象となる『課税所得』を計算する過程で収入から差し引きできる控除項目です。
但し、その減額できる金額には制限があります。
その年の「総所得金額等」の40%相当額がその上限です。
2-1. 控除は原則「所得控除」
税金を減額する仕組みは以下の2つがあります。
- 所得控除
収入から経費を差し引いて計算された『所得』から差し引ける項目が『所得控除』です。
「扶養控除」とか「配偶者控除」、「生命保険料控除」などと同様な扱いです。 - 税額控除
「課税所得」に税率を掛け算して得られた税金の額から差し引くことができる項目が『税額控除』です。
所得税における寄附金控除は原則は「所得控除」です。
なお、政治活動に関する寄附金、認定NPO法人等に対する寄附金及び公益社団法人等に対する寄附金のうち一定のものについては、所得控除に代えて、税額控除を選択することができます。
詳しくは国税庁のサイトをご参照下さい。
2-2. 寄附金控除が認められる寄附とは?
所得税で控除が認められる寄附金は『特定寄附金』となる寄附に限定されています。
特定寄付金となる寄付金控除対象の主な団体・組織は以下の通りです。
- 国・地方公共団体
- 公益社団法人・公益財団法人
- 独立行政法人
- 自動車安全運転センター
- 日本司法支援センター
- 日本私立学校振興・共済事業団
- 日本赤十字社
- 社会福祉法人
- 更生保護法人
- 政党
- 認定特定非営利法人等
国・地方公共団体以外への寄附金には特定寄附金になるための要件などがあります。
例えば政党に対する政治献金も一定の要件を満たした政党に一定の要件を満たした寄附金を支出した時には「特定寄附金」として寄附金控除の対象となります。
詳しくは国税庁のサイトをご参照下さい。
2-3. 「所得控除」で控除できる上限金額は?
所得控除で控除できる金額は以下の通りです。
「次の 1. 2. のいずれか低い金額」- 2千円 = 寄附金控除額
- その年に支出した特定寄附金の額の合計額
- その年の総所得金額等の40%相当額
「総所得金額等」は給与所得のみのサラリーマンにとっては「給与所得」のことを指しています。
詳しくは下記の記事をご参考してみて下さい。
上記の算式はつまりは「総所得金額の40%以内なら寄附金総額から2千円だけ差し引いた金額が控除金額として認められる」ということを意味しています。
しかしながら、この金額は「税額控除」ではありませんので、2千円を差し引いた残りの金額で税金が減額できるという意味ではありません。
寄附金控除以外の所得控除の合計:215万円
〔寄附金控除額の計算〕
1,500,000円 - 2,000円 = 1,498,000円
6,000,000円 × 40% = 2,400,000円
1,498,000円 < 2,400,000円
∴ 寄附金控除額:1,498,000円
〔税額の計算〕
〔寄附金控除反映前〕
(6,000,000円 - 2,150,000円)× 20% - 427,500円 = 342,500円(復興特別税考慮前)
〔寄附金控除反映後〕
{6,000,000円 - (2,150,000円 + 1,498,000円)}× 10% - 97,500円 = 137,700円(復興特別税考慮前)
適用所得税率は下記の記事をご参照下さい。
〔寄附金控除による減税額〕
342,500円 - 137,700円 = 204,800円
寄附金支出額150万円に対して204,800円の減税額となりその割合は13.65%です。
3. 住民税にとっての寄附金
それでは次に住民税(所得割額)の計算における『寄附金控除』の取り扱いをみてみましょう。
3-1. 控除は「税額控除」
住民税の計算において「寄附金控除」は「所得控除」ではなく「税額控除」となります。
すなわち税率を掛け算して計算された税金の金額を減額できる項目のひとつとなります。
3-2. 寄附金控除が認められる寄附は自治体によって異なる
住民税の計算には自治体ごとに定められる条例に基づいて決まる要素があります。
従いまして自治体によって寄附する相手先等によって税金の控除額も異なります。
詳細な内容については各自治体の公式サイト等で確認する必要があります。
本記事では東京都の事例をご紹介します。
〔東京都の条例指定寄附金一覧〕2015年12月末現在
- 財務大臣指定寄付金
- 独立行政法人/地方独立行政法人
- 特殊法人
- 公益財団法人・社団法人
- 学校法人
- 社会福祉法人
- 更生保護法人
都内に主たる事務所を有する更生保護法人 - 認定NPO法人
詳しくは以下の記事をご参照下さい。
3-3. 「税額控除」で控除できる上限金額は?(基本控除額)
住民税における税額控除で控除できる金額は以下の通りです。
(「次の 1. 2. のいずれか低い金額」- 2千円 )× 10% = 住民税寄附金控除額
- その年に支出した指定寄附金の額の合計額
- その年の総所得金額等の30%相当額
住民税における税額控除の基本的な控除額は「寄附金から2,000円を差し引いた金額」の10%で計算し、上限は総所得金額の30%となります。
※但し、控除対象となる寄附先は条例で指定するため、都の条例では指定があるが市町村の条例では指定がない、といった団体に寄付をした場合には都のみで認められる相手先への寄附金の場合は都税の税率である4%、市町村のみで認められる相手先への寄附金の場合は市町村民税の税率6%が税額控除額となります。
寄附金控除以外の所得控除の合計:200万円 調整控除:1,500円
〔寄附金控除額の計算〕
( 1,500,000円 - 2,000円)× 10% = 149,800円
6,000,000円 × 30% = 1,800,000円
149,800円 < 1,800,000円
∴ 寄附金控除額:149,800円
〔税額の計算〕
〔寄附金控除反映前〕
(6,000,000円 - 2,000,000円)× 10% - 1,500円 = 398,500円
〔寄附金控除反映後〕
(6,000,000円 - 2,000,000円)× 10% -(1,500円 + 149,800円)= 248,700円
〔寄附金控除による減税額〕
398,500円 - 248,700円 = 149,800円
「寄附金から2千円を差し引いた後の金額に10%を掛け算した金額」が減税されることになります。
3-4. 「ふるさと納税」には特例が適用される
自治体への寄附金は「ふるさと納税」制度が適用されるため、上記の(基本控除額)の他に「特例控除額」があります。
「基本控除額」の計算で算出された税額控除額にこの「特例控除額」として計算された税額控除額が加算されます。
下記の記事では「ふるさと納税」の控除限度額を計算するのに最も重要な住民税所得割額を計算できるエクセルのテンプレートをご用意しました。
是非、ご自分の金額を確かめてみて下さい!
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