「ふるさと納税」税金控除限度額をエクセルテンプレートでシミュレーション(原則計算編)

下の過去記事にて一般的な寄附金控除について所得税と住民税の控除額計算と控除上限額についてお伝えしました。

今回は「ふるさと納税」で税金の控除可能な限度額の計算方法をお伝えするとともにエクセルのテンプレートをご用意しましたのでご利用下さい。

1. 「ふるさと納税」と税金の寄附金控除

ふるさと納税の税金について簡単におさらいしましょう。

1-1. 「ふるさと納税」と税金の関係

「ふるさと納税」とは地方自治体に対する寄附をすることにより実現します。

所得税と住民税の「寄附金控除」という仕組みを利用して所得税と住民税に対して優遇することにより自治体への寄附金をしやすくしています。

そして寄附金の額の分だけ納税先を移転するような効果があります。

寄附金としての支出金額のほぼ同額(2千円を差し引いた金額)が税金から減額されるので、2千円の手数料を支払って税の支払先を変更できる制度といったところです。

制度について詳細を確認したい方は以下の記事をご参照下さい。

2-1. 寄附金控除の計算の原則

今度は寄附金を支払った時の税金の恩恵である「寄附金控除」について簡単にご説明します。

寄附金控除は自治体以外にも様々な寄附の相手先が控除対象となります。

所得税なら「所得控除」として寄附金総額から2千円を差し引いた金額が「所得」からの控除対象となります。

住民税は「税額控除」として寄附金総額から2千円を差し引いた金額が「住民税」からの控除対象となります。

しかしながら上記の控除額は上限金額があり、それ以上寄附をしても税金の計算上の恩恵を受けることができません。

また決められた上限金額の範囲内であっても支払ったから2千円を差し引いた金額全額が税金から差し引かれて減税の恩恵を受けられるわけではありません。

所得税なら「支払った寄附金から2千円を差し引いた金額」に適用される税率分を掛け算した金額プラスα、住民税なら「支払った寄附金から2千円を差し引いた金額」の10%相当額の税金の減額を受けられます。

詳しくは以下の記事をご参照ください。

3. 「ふるさと納税」は特例計算が認められる

自治体に支出する寄附金に限って「ふるさと納税」として寄附金控除の金額に「特例枠」を設けて更に優遇が受けられるようにしています。

このためその上限額範囲内であれば「支払った寄附金から2千円を差し引いた金額」の全額を税金の減額に充当することが可能です。

「ふるさと納税」がここまでもてはやされる様になったのは、実質2千円を負担するだけで各地の名産品を始めとする「返礼品」を寄附した自治体からもらえるからです。

そしてそれを支えているのが「寄附金」の特例を認めている点にあります。

但しこの「特例」を使ったからと言って必ず「ふるさと納税」で寄附した金額の「全額-2千円」が税金の減額に充当できるというわけでもありません。

その辺も含めて解説していきたいと思います。

4. 「ふるさと納税」の特例には更に「原則」と「ワンストップ特例制度」がある

寄附金控除における特例計算が適用される「ふるさと納税」は更に「原則的な計算方法」と「ワンストップ特例制度による計算方法」があります。

今回は「ふるさと納税」で適用されるこの2つの計算方法うち「原則的な計算方法」を見ていきます。

5. 原則的な「ふるさと納税」の税金計算

原則的なふるさと納税の税金計算は以下の様に行います。

ふるさと納税の寄附金控除の図解(原則)

  1. 所得税からの控除 =(ふるさと納税額-2,000円)×「所得税の税率」
    ・所得税からの控除額は、上記1.の計算式で決まります。
    なお、控除の対象となるふるさと納税額は、総所得金額等の40%が上限です。

    ※ 所得税の税率は復興特別所得税の税率を加えた率となります。
    ※ 所得税の税率は、課税所得の増加に応じて高くなるように設定されており、その納税者に適用される税率を用います。


    住民税からの控除には「基本分」と「特例分」があり、それぞれ以下のように決まります。

  2. 住民税からの控除「基本分」=(ふるさと納税額-2,000円)× 10%
    ・住民税からの控除の基本分は、上記2.の計算式で決まります。
    ・なお、控除の対象となるふるさと納税額は、総所得金額等の30%が上限です。
  3. 住民税からの控除「特例分」=(ふるさと納税額-2,000円)×(100%-10%「基本分」-所得税の税率)
    ・住民税からの控除の特例分は、この特例分が住民税所得割額の2割を超えない場合は、上記3.の計算式で決まります。
  4. 住民税からの控除「特例分」=(住民税所得割額)× 20%
    ・「特例分(3.で計算した場合の特例分)」が住民税所得割額の2割を超える場合は、上記4.の計算式となります。
    ・この場合、1. 、2.及び4.の3つの控除を合計しても(ふるさと納税額-2,000円)の全額が控除されず、実質負担額は2,000円を超えます。

控除される金額は以下の様になります。

( 1. 所得税から控除 )+( 2. 住民税からの控除「基本分」)+( 3.又は4. 住民税からの控除「特例分」)

それぞれの控除ごとに「控除できる上限金額」があります。

5-1. 「ふるさと納税」の減税額の計算例(原則計算)

例)総所得金額:600万円 1年間の「ふるさと納税」の額:150万円
  寄附金控除以外の所得控除の合計:215万円 住民税所得割額:40万円


  1. 所得税からの控除 =(ふるさと納税額-2,000円)×「所得税の税率」
    ・総所得金額等の40%が上限
    ・所得税の税率は復興特別所得税の税率を加えた率

    課税所得(税率を掛け算する対象となる所得)は「総所得金額等」から「所得控除」を差し引いた金額です。

    所得税計算における寄附金控除は「所得控除」に該当しますので、厳密に言いますと上記の計算ではなく以下の計算となります。



    〔寄附金控除額の計算〕

    1,500,000円 - 2,000円 = 1,498,000円

    6,000,000円 × 40% = 2,400,000円

    1,498,000円 < 2,400,000円 (上限に達していない)

    寄附金控除額:1,498,000円(所得控除)


    〔税額の計算〕

    〔寄附金控除反映前〕

    (6,000,000円 - 2,150,000円)× 20% - 427,500円 = 342,500円(所得税)

    342,500円 × 2.1% = 7,192円(復興特別所得税)

    342,500円 + 7,192円 = 349,692円(所得税及び復興特別所得税)

    〔寄附金控除反映後〕

    {6,000,000円 - (2,150,000円 + 1,498,000円)}× 10% - 97,500円 = 137,700円(所得税)

    137,700円 × 2.1% = 2,891円(復興特別所得税)

    137,700円 + 2,891円 = 140,591円(所得税及び復興特別所得税)


    〔寄附金控除による減税額〕

    349,692円- 140,591円 = 209,101円

    総務省ふるさと納税ポータルサイトの下記の計算式とは結果が異なります。

    所得税からの控除 =(ふるさと納税額-2,000円)×「所得税の税率」

    =(1,500,000円 - 2,000円)×「20.42%」=305,892円

    それは「税率は課税所得で決まる」ということに起因しています。

    「ふるさと納税により所得控除額が増えて課税所得が減額された」ことにより、「税率が下がった」ためです。

    寄附金により「所得控除」が1,498,000円増えたことにより10%と20%の税率のボーダーライン(課税所得330万円)を超えたためです。

    (寄附金をしない場合の課税所得は385万円、寄附金をした場合の課税所得は235.2万円)

    適用所得税率は ⇒ コチラを参照

    寄附金が少額であったり元々の課税所得が税率のボーダーライン付近でない場合には単純に(ふるさと納税額-2千円)×〔税率〕が減税額と捉えて差し支えありませんが、税率が変わる場合には注意が必要ということです。

    簡易的に判断するには総務省のポータルサイトの計算式でも良いですが、正確に計算したい場合には必ず所得税の寄附金控除の計算を行うことをおススメします。

    詳しくは下記の記事をご参照下さい。


  2. 住民税からの控除「基本分」 = (ふるさと納税額-2,000円)× 10%
    ・総所得金額等の30%が上限

    住民税における「寄附金控除」は所得税の時の「所得控除」とは異なり、「税額控除」になります。

    課税所得に税率(10%)を掛け算して計算された「税額」から直接控除することになります。

    所得税の様に税率が課税所得により変動せず寄附金が課税所得に影響することもないこともありません。

    従いまして総務省ふるさと納税ポータルサイトに説明された通りの算式に当てはめれば減税額が求められます。

    住民税からの控除「基本分」=(1,500,000円-2,000円)× 10%

    = 149,800円

    ※上限金額に達していないかの確認

    総所得金額等の30% = 6,000,000円× 30% = 1,800,000円

    「ふるさと納税控除対象額」= 1,498,000円 < 1,800,000円(上限に達していない)

    住民税からの控除「基本分」〔149,800円〕

  3. 住民税からの控除「特例分」=(ふるさと納税額-2,000円)×(100%-10%「基本分」-所得税の税率)
  4. 住民税からの控除「特例分」=(1,500,000円-2,000円)×(100%-10%-10.21%)

    = 1,498,000円 × 79.79% = 1,195.254円

    ※「住民税所得割額の2割を超える場合」に該当していないかの確認
    (住民税所得割額を400,000円と仮定します)

    400,000円 × 20% = 80,000円 < 1,195.254円

    ・「特例分(3.で計算した場合の特例分)」が住民税所得割額の2割を超える場合

  5. 住民税からの控除「特例分」= (住民税所得割額)× 20%

    住民税からの控除「特例分」〔80,000円〕

150万円のふるさと納税をして各種税金から控除される金額の合計

所得税からの税額控除額〔209,101円〕
住民税からの控除「基本分」〔149,800円〕
住民税からの控除「特例分」〔80,000円〕
合計:438,901円

つまり

1,500,000円 - 438,901円 = 1,061,099円

については税金の減額を受けることができないふるさと納税額となってしまうということです。

6. 「ふるさと納税」の特例とは住民税における税額控除である「寄附金控除」の割り増し分

計算を見ていくとわかりますが、『(1)所得税からの減額』『(2)住民税からの減額(基本分)』『(3)住民税からの減額(特例分)』の3種類で構成されています。

「ふるさと納税」による税額の減額の優遇措置は住民税計算の「特例分」とした額が通常の寄附金よりも多く減額できるという点にあります。

上記の例では8万円でした。

一般的な寄附金控除の仕組みを説明した以下の記事をお読み頂くと判りますが、一般の寄附金は「特例分」以外の分だけが認められています。

7. 「特例分」は上限金額に厳しい制限がある

「ふるさと納税」をした人の所得にもよるのですが、(1)と(2)については150万円という高額の寄附をしても控除の上限金額に達することなく満額が控除対象になるのに対して(3)の特例部分は上限金額の縛りが厳しくバッサリと寄付金額が切り捨てられているのが分かります。

つまり(3)の上限額の基準となっている『住民税所得割額の2割』という部分が非常に重要だという事が分かります。

7-1. 特例分における上限の基礎『住民税所得割額』とは?

ではこの『住民税所得割額』って一体何でしょうか?

住民税は国が課税する所得税に対して地方公共団体が課税する地方税です。

7-1-1. 住民税の構成と税率

住民税は以下の4つで構成されています。

  1. 市町村民税 所得割
  2. 市町村民税 均等割
  3. 都道府県民税 所得割
  4. 都道府県民税 均等割

『均等割』とは収入や所得によらず一律に課税される部分を言います。

これに対して『所得割』とは所得の大きさによってその税額が変わります。

但し所得税の様に所得が上がるほど税率が上がっていく「累進課税制度」は採用されておらず、一定の税率となっています。

市町村民税所得割が6%、都道府県民税所得割が4%で住民税所得割としては合計で10%となります。

7-1-2. どういう計算構造?

微妙に異なる部分もありますが、そのほとんどが所得税とほぼ同様の計算構造です。

例えば「寄附金控除」が所得税では「所得控除」であるのに対して、住民税では「税額控除」として税額の減額が可能です。

また保険料控除や配偶者控除などの控除項目も金額が微妙に異なります。

給与収入のみのサラリーマンを例にすると基本は以下の様な計算式になります。

「住民税所得割額」=(「給与所得」-「所得控除」)×「税率」-「税額控除」

  「給与所得」=「給与収入」-「給与所得控除」

7-1-3. エクセルテンプレートで住民税所得割額をシミュレーション

給与所得のみのサラリーマンの方向けのエクセルの住民税計算シミュレーションテンプレートを用意しています。

給与明細から入力しなければならないタイプですので、手間がかかりますが年末調整項目を入力すれば住民税所得割額を簡単に計算できるようにしています。

宜しかったらご利用の上、試算してみて下さい。

このシートのご利用方法は以下の記事をご参照下さい。

源泉徴収票や確定申告書のデータを転記するだけで気軽に計算できるテンプレートも準備中です。

「年末調整計算シート」の「給与所得」欄は手入力できますので、給与台帳作成を省きたい方はこの欄にダイレクトで給与所得若しくは確定申告の「総所得金額等」を入力して計算を進めることができます。

いずれ当ブログで「源泉徴収票からの転記バージョン」や「確定申告書からの転記バージョン」もご紹介したいと思いますが、当面は本シートを利用してシミュレーションしてみて下さい。

7-2. 「特例分」における税額控除金額を算定する

まずは寄附金(ふるさと納税額)がゼロとして住民税所得割額がいくらになるかを計算します。

その金額の20%が「ふるさと納税」の税額控除の「特例分」の上限金額であることが判ります。

先ほどの計算例を考えてみましょう。

住民税所得割額が40万円でした。

40万円 × 20% = 8万円 

となります。

8. 税金の控除可能な「ふるさと納税」上限金額をシミュレーション

「ふるさと納税」で税金の控除が可能な金額は以下の算式でした。

( 所得税からの控除 )+( 住民税からの控除「基本分」)+( 住民税からの控除「特例分」)

仮に上限の「ふるさと納税額」から2千円を差し引いた額を「Y」として方程式を立ててみると…

「Y」× (100% - 10% -「所得税率」)= 税額控除(特例分)

です。

適用される所得税率が復興特別所得税も含めた税率が10.21%とすると、

Y× (100% - 10% - 10.21% )= 80,000円

という方程式が成り立ちます。

0.7979Y = 80,000円

Y= 100,263円

「ふるさと納税額」は「Y」に2千円を足した金額となります。

税金の控除可能な「ふるさと納税」上限金額:102,263円 となります。

若干1円単位で端数が出ますが、これで特例分を最大に控除していることになるかと思います。

コメント

スポンサーリンク
【中古】キングダム <1-70巻セット> / 原泰久(コミックセット)
created by Rinker
¥33,348 (2024/03/28 07:10:20時点 楽天市場調べ-詳細)
インボイス ゴム印 登録番号 スタンプ 法人番号 インボイス番号 ハンコ はんこ 印鑑
created by Rinker
¥680 (2024/03/28 09:22:52時点 楽天市場調べ-詳細)
【中古】東京・横田基地 / 「東京・横田基地」編集委員会 / 連合出版
created by Rinker
¥1,800 (2024/03/28 09:22:52時点 楽天市場調べ-詳細)
タイトルとURLをコピーしました