「ふるさと納税ワンストップ特例」適用の住民税の控除限度額の計算方法

以下の過去の記事にて「ふるさと納税」で税金が減額できる「ふるさと納税」の限度額を計算する方法をお伝えしました。

今回は「ふるさと納税ワンストップ特例」を適用した場合の住民税の控除限度額を計算する方法をお伝えします。

1. ふるさと納税ワンストップ特例とは?その概要

各種計算のご説明に入る前に簡単にこの特例の概要について簡単にご紹介しておきます。

既にご存知の方は目次を参照の上、読み飛ばして下さい。

1-2. 「ワンストップ特例」が適用できる人は限定されている

「ワンストップ特例」には適用できる条件があります。

  1. 給与所得者であること
  2. 所得税の確定申告をしないこと
  3. ふるさと納税を行う自治体の数が5団体以内であること

以上の3つが条件です。

この制度が「サラリーマンだけが受けられる恩恵」であることが判ります。

「所得税の確定申告」というと自営業者や年金生活者の方はもちろんですが、サラリーマンでも確定申告をしている人もいます。

「申告義務」により確定申告するサラリーマンもいれば、税金の優遇を受けるために「選択して申告」しているサラリーマンの方もいらっしゃいます。

  • 申告義務があるから確定申告をするサラリーマンの例
    〔不動産所得等の他の所得がある〕〔2ヶ所以上から給与を受けている〕〔年間給与収入が2千万円を超えている〕〔退職等の理由により年末調整をしていない〕
  • 選択して確定申告をするサラリーマンの例
    〔医療費控除を受ける〕〔住宅ローン減税を受ける初年度〕〔災害等により雑損控除を受ける〕

また「ふるさと納税」は1ヶ所に限定されておらず何ヶ所の自治体に寄附をしても構いません。

しかしながら「ワンストップ特例」を受けるには5ヶ所以内に絞る必要があります。

1-2. 「ワンストップ特例」のメリットとは?

最大のメリットは「所得税の確定申告をしなくて良い」ということです。

この特例制度の対象者は「確定申告をしないサラリーマン」なわけですから「ふるさと納税」の原則ルールである「確定申告しなければならい」というのは大きなハードルとなります。

税金について疎い人でも簡単にできますが、こういったことが苦手な方はいます。

苦手な人でなくても面倒であるには変わりありません。

全く手続きが不要という訳ではないので「ワンストップ特例」が「手間いらず」というわけにはいきませんが、面倒な申告書の作成などを省くことができるのは大きなメリットとなります。

1-3. もう一つの「ワンストップ特例」のメリット

実は私はもう一つのメリットがあると考えています。

それは全ての人にとってではなく「特定の方」にだけメリットになるという点です。

それは『住民税の額をできるだけ多く減額するとメリットがある方』にとっては「ワンストップ特例」はメリットになる可能性があります。

1-3-1. 「ワンストップ特例」では原則と異なり所得税の減額は無い

のちほど計算の詳細はお伝えしますが、「ワンストップ特例」は所得税の確定申告を要する原則の「ふるさと納税」とは異なり、税金が減額されるのが住民税のみです。

例えば5万円のふるさと納税をした場合に、原則計算では所得税から1万円、住民税から3万8千円、合計で4万8千円の税金の減額が可能だったとします。

「ワンストップ特例」では4万8千円全額が住民税から減額されます。

このことがメリットになる方っているんでしょうか?

例えば各種補助金に所得制限を課しているケースがあります。

この所得制限の判定基礎にはその補助金によっていろいろな数値を利用します。

『高等学校等就学支援金』『市町村民税所得割額』というものを判定基準にしています。

公立高校の授業料の無償化になる制度には現在所得制限が課せられています。

「ふるさと納税」をすることによりこの判定基準である「市町村民税所得割額」(住民税の一部)を減額可能です。

その減額幅が原則計算よりも「ワンストップ特例」の方が多く取れるためメリットになる可能性があるのです。

詳しくは下記の記事をご参照下さい。

1-4. 「ワンストップ特例」にデメリットはあるの?

ひとつは「できるだけ沢山の自治体に寄附をしていろんな返礼品をゲットしたい!」という方にとっては寄附先の数に制限がかけられてしまうのでデメリットとなるのかもしれません。

また「もう一つのメリット」とは裏返しで補助金や保育園の保育料の算定基礎が「所得税」となっていたら、所得税が1円も減額されない「ワンストップ特例」は不利になります。

2. 「ふるさと納税ワンストップ特例」の税金の控除計算

さてそれでは本題であるワンストップ特例を利用した場合の税金の控除可能額の上限金額の算定方法をお伝えしましょう。

2-1. 原則計算と異なるのは所得税の減額がないこと

原則の計算方法では「ふるさと納税」は3項目で税金の減額を行いました。

  1. 所得税からの控除
    (ふるさと納税額-2,000円)×「所得税の税率」
  2. 住民税からの控除「基本分」
    (ふるさと納税額-2,000円)× 10%
  3. 住民税からの控除「特例分」
    (ふるさと納税額-2,000円)×(100%-10%「基本分」-所得税の税率)
     又は(住民税所得割額)× 20%

詳しくは下記記事をご参照ください。

しかし「ワンストップ特例」を適用した場合には所得税からの税金の減額はありません。

2-2. 「ワンストップ特例」には「申告特例控除」で住民税が更に控除される

原則計算で控除項目であった「所得税からの控除」に代わり、「ワンストップ特例」では「申告特例控除」という控除項目が追加されます。

  1. 住民税からの控除「基本分」
    (ふるさと納税額-2,000円)× 10%
  2. 住民税からの控除「特例分」
    (ふるさと納税額-2,000円)×(100%-10%「基本分」-所得税の税率)
     又は(住民税所得割額)× 20%
  3. 住民税からの控除「申告特例控除」
    「特例分」×「課税所得に応じた一定の割合」

となります。

2-3. 「基本分」「特例分」の計算方法

「基本分」「特例分」の計算は原則の計算方法と同様です。

2-4. 「申告特例控除」の計算方法

「申告特例控除」の金額の算定は先ほど示した通り、

「申告特例控除」= 「住民税からの控除(特例分)」×「課税所得に応じた一定の割合」

で計算されます。

2-4-1. 「特例分」は既に計算された数値を利用する

「特例分」は既に計算できていますのでその数値を使います。

注意したいのは「端数処理前」の金額であることです。

大した金額の差はありませんが、小数点以下の数値が発生したらそのまま計算します。

2-4-2. 「課税所得に応じた一定の割合」とは?

計算式の「課税所得に応じた一定の割合」は以下の表に当てはめます。

下の表における「課税所得」とは住民税計算における「課税所得」を指しています。

「申告特例控除」における「課税所得に応じた一定の割合」
「課税される所得金額」-「人的控除差額」 一定の割合
195万円以下 5.105/84.895
195万円を超え 330万円以下 10.21/79.79
330万円を超え 695万円以下 20.42/69.58
695万円を超え 900万円以下 23.483/66.517
900万円を超 33.693/56.307

3. 「ワンストップ特例」の住民税控除額計算の具体例

それでは実際の数値を使って具体的な計算を解説します。

今回は原則計算でご紹介した時と異なり、より厳密な計算をご紹介します。

住民税を実際の計算で行う様に「市町村民税」分と「都道府県民税」分に分けて計算してみます。

4. 「ワンストップ特例」で控除できる寄附金の上限はこう計算する

原則計算の場合には、寄附金控除の上限は以下の様なロジックで算出しました。

  1. 3つの控除「1.所得税からの控除」「2.住民税からの控除(基本分)」「3.住民税からの控除(特例分)」のうち、最も上限金額の制限が厳しい「3.住民税からの控除(特例分)」に着目する
    (住民税所得割額)× 20%
  2. 「3.住民税からの控除(特例分)」の控除計算から逆算して方程式を解く
    Y× (100% - 10% - 10.21% )= 80,000円
  3. 上記の方程式の答えに2千円を足した金額が税金控除可能な「ふるさと納税」上限金額
    「ふるさと納税額」は「Y」に2千円を足した金額

それでは「ワンストップ特例」を適用する場合の上限はどの様に計算できるのでしょうか?

4-1. 「ふるさと納税ワンストップ特例」上限金額算定ロジック

それでは「ワンストップ特例」の場合は3つの控除項目のうちどの項目が上限金額を決定づけるのでしょうか?

「申告特例控除」は「住民税からの控除(特例分)」が計算の基礎となります。

「申告特例控除」= 「住民税からの控除(特例分)」×「課税所得に応じた一定の割合」

そして「住民税からの控除(特例分)」は(住民税所得割額)× 20%という上限が存在しますので、結局のところ(住民税所得割額)× 20%が上限を既定します。

「課税所得に応じた一定の割合」は実は「住民税からの控除(特例分)」が上限を超えなければ「ふるさと納税-2千円」が税金の控除額になるようにその割合が設定されています。

【結論】

「住民税からの控除(特例分)」の控除計算から逆算して方程式を解く

4-2. 「ふるさと納税ワンストップ特例」上限金額をシミュレーション

それでは実際にどのように計算するか具体的な数値でシミュレーションしてみましょう。

〔前提条件〕住民税所得割額:40万円/復興特別所得税も含めた所得税率:10.21%


仮に上限の「ふるさと納税額」から2千円を差し引いた額を「Y」として方程式を立ててみると…

「Y」× (100% - 10% -「所得税率」)= 税額控除(特例分)

です。

40万円の住民税所得割額の場合の税額控除はその20%が上限となります。

400,000円 × 20% = 80,000円

適用される所得税率が復興特別所得税も含めた税率が「10.21%」なので、

Y× (100% - 10% - 10.21% )= 80,000円

という方程式が成り立ちます。

0.7979Y = 80,000円

Y= 100,263円

税金の控除可能な「ふるさと納税」上限金額:102,263円 となります。

5. 今年の税金の控除期限に間に合うように「ふるさと納税」の準備を!

カードを利用すれば大抵の「ふるさと納税」のポータルサイトでネット申し込み時点が「寄附した日」となります。

今年の所得に対する税額控除に間に合いますが、手続きや「どんな返礼品をゲットするか?」といったことについてはあらかじめ準備を進めておくと安心です。

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