前回の記事では、どの病気でもよくある点滴や採血のお話をしました。
今日は肺高血圧症ならではの医療器具のお話です。
1. 在宅酸素療法(HOT)とは?
肺高血圧症は肺でのガス交換が自力では上手く出来ません。
だから血液中の酸素が不足して息切れなど色々な症状が出てきてしまいます。
血液中の酸素濃度が低い状態は病状を悪化させます。
それを防ぐ為に欠かせない治療の一つが、不足している酸素を補うこと。
自宅でも24時間 酸素吸入を可能にしているのが<在宅酸素療法(HOT)>です。
患者によっても病状によっても酸素の吸入量は違ってきます。
吸入時間も24時間だったり、寝るときだけだったり、安静時は外していいけど動く時だけ吸わなきゃいけなかったり…
症状によって色々です。
2. 私の『酸素生活』
ちなみに私の場合は、2ℓの酸素を24時間吸っていないといけません。
検査入院してすぐ、血中酸素濃度をパルスオキシメーターで測ると91しかありません。
健康な人の場合は<98前後>はあります。
酸素不足であることが一目瞭然でした。
すぐに酸素吸入が始まり、カニューラと呼ばれる透明のチューブを鼻につけます。
見た目、更に病人らしさが5割増し。
吸い始めるとすぐ、正常値の98まで上がってホッとしました。
退院後は自宅でも酸素吸入の管理をしなくてはなりません。
それで退院する数日前、酸素のメーカーの方が病室まで来て使い方の説明をしてくれました。
3. 自宅では『酸素供給器』が活躍する
自宅に設置する酸素供給器は石油ファンヒーター程度の大きさです。
私が入院している間に自宅に設置してくれるとのこと。
設置場所や使い方、日程調整については主人とやってもらうようお願いしました。
なので病室での説明は、主に<携帯用の酸素ボンベ>の使い方でした。
4. 『酸素ボンベ』とご対面
病室に運ばれて来た<携帯用の酸素ボンベ>を初めて見たとき、
「これから一生これを転がして歩くのかもしれない」
と思って気が重くなったのを思い出します。
きっと周りの視線も気になることでしょう。
5. 実はメリットがある『酸素ボンベ』生活
でも、暫くして…
これを持ち歩くことで『一目で病人』と分かってもらえるメリットもありかな?って考え直しました。
実は以前、大学病院まで片道2時間の道のりを<タクシー+バス+電車>を乗り継いで行ったことがあります。
当時、小学生だった息子も一緒に連れて行きました。
息苦しく辛くても、電車は結構混んでいて座れませんでした。
そんな中、席を譲ってもらえたのは息子の方。
骨折して腕に包帯を巻いていたせいで、息子は『一目で怪我人』だと分かってもらえたからです。
その時気づきました。
肺高血圧症に限らず、内部疾患の患者さんは端から見ると健康な人と変わらない。
だから辛い時も席を譲ってもらえなかったり、例え座ることが出来ても、
『若いのにお年寄りに席を譲らない』
と冷たい視線に耐えながらだったり…
通院や通勤・通学に苦労している人も多いんだろうなあ。
そんな経験をしていたので『一目で病人』と分かってもらえる目印として<携帯用の酸素ボンベ>を持ち歩くのもいいかもって、前向きに考えることにしました。
6. 支えてくれる方に感謝
それに、もし<携帯用の酸素ボンベ>が無かったら、私はこれから先どこにも出掛けられません。
病気のせいで制限されてしまう患者の生活を豊かにしてくれる医療器具。
それをメンテナンスしてくれたり、電話一本すれば翌日には新しいボンベと交換しに来てくれる医療器具メーカーの方々。
感謝して使わせて頂きたいと思います。
私の相棒である<携帯用の酸素ボンベ>にはコーヒー店KALDIのおとぼけマスコット・ヤギべえをつけて可愛がっています。